カワウソちゃんが送り先分からないから

カワウソちゃんが送り先分からないから
強硬策

『バー「しずく」のオーナー、カワウソのソウタ』

水辺の町「ミズノハ」に、ひっそりとたたずむ小さなバーがある。名前は**「しずく」**。夜になると木の看板に灯る柔らかなランプの光が、静かに通りを照らす。

このバーのオーナーはちょっと変わっている——なんと、カワウソのソウタ。
ソウタは、いつもネイビーブルーのキャスケット帽と、蝶ネクタイを身につけている。毛並みは手入れが行き届き、バーの奥から聞こえるグラスの音やジャズが、彼の品のある雰囲気にぴったりだった。




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ソウタの過去

ソウタはもともと、北の湖にある漁師町で生まれた。小さい頃から水辺を泳ぎ回り、魚を追いかけては満足げに笑っていた。でも彼には、他のカワウソとは違う夢があった。

それは、「人と話して、酒を酌み交わすこと」。

誰もが笑い飛ばした夢だった。でもソウタは、本気だった。人間の言葉を覚え、町へ出て、いくつもの酒場を巡り、技術を学び、自分だけの味と空間を作り上げた。




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そして、今

今では「しずく」は、町の人々の隠れ家的存在。失恋した人、夢に悩む人、ただ誰かと話したいだけの人——みんな、ソウタの元へやってくる。

彼は言う。

「お酒ってのはね、その人の心をほどくカギみたいなもんさ。飲みすぎないように、ちょうどよくね。」




ソウタの出す特製カクテルは、味だけじゃなく、その夜の話題にもぴったりと寄り添うように調和する。




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小さな奇跡

ある晩、閉店後の「しずく」で、ソウタは一通の手紙を読んでいた。
それは北の町から届いた、かつての友からのものだった。

「お前の夢、ちゃんと叶えてたんだな。今度、飲みに行くよ。」




ソウタはふっと笑い、静かにグラスを磨いた。
夜の風が、ランプの灯りを優しく揺らしていた。

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