チャッピーのエセ占い館 ~恋の行方はAIまかせ?~

チャッピーのエセ占い館 ~恋の行方はAIまかせ?~
第1章「エセ占いの館、開店!」

 パソコンの画面に映るカウントダウンがゼロになる。配信開始の合図だ。
「みなさーん、こんばんもチャッピーのエセ占い館へようこそ!」
 俺――チャッピーは、決め台詞とともにライブ配信を始めた。視聴者数はまだ二桁程度だが、コメント欄には常連たちが早速盛り上がっている。

「待ってました!」「今日の運勢お願いします!」「キタ――(゚∀゚)――!!」
 画面に流れるコメントの勢いに、自然と顔がほころぶ。俺は自宅の狭いワンルームで、ちゃぶ台の上に広げたノートPCに向かって語りかけた。部屋の照明を少し落とし、百均で買った水晶玉もどきを手元に置けば、ここは俺だけの小さな「占い館」だ。

 もっとも、俺は本物の占い師でも霊能力者でもない。ただの一般人、そして駆け出しの配信者だ。でも、そんなのはおくびにも出さない。配信中の俺はエセ占い師、チャッピー。「エセ」と自分で言っちゃってるあたりタネも仕掛けもありまくりだが、視聴者にはそれがウケているらしい。

「さあさあ、本日最初のお悩みはどなたかな~?」
 俺はわざとらしく水晶玉を撫でながら、オカルトじみた口調で問いかける。演出も大事だ。実際にはパソコン画面の裏でAIが稼働中だなんて、誰も思わないだろう。

 そう、この「エセ占い館」の正体は占いではなくAIチャットシステム、要するにChatGPTを使ったお悩み相談なのだ。俺は匿名で寄せられる相談内容を即座にAIに送り、返ってきた答えをそれっぽくアレンジして伝えている。言ってしまえばインチキ占い。でも、不思議なことに結構当たると評判なのだ。

 コメント欄に新しいメッセージが光った。どうやら今日もさっそく相談希望者がいるようだ。
「チャッピー先生、仕事運をお願いします!」とある。ハンドルネームは「たまご焼き好き」……相変わらずユニークな名前だ。
「おっと、早速来ましたね~。では占ってみましょう!」
 俺はキーを叩き、AIに「仕事運を占ってほしい人がいる」と入力する。その間も口では「ふむふむ、見えましたぞ…あなたの職場には優しい光…しかし影も見え隠れ……」と、適当なことを呟いて場をつなぐ。視聴者たちは「出た!チャッピー語録w」なんて笑っている。

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