「うらなイヌッ!」第9章:新たな気配

「うらなイヌッ!」第9章:新たな気配

ある日、公園で、また彼女を見つけた。

でも、今日は少し様子が違う。

彼女の隣には、別の人間がいる。

男の人間。
落ち着いた雰囲気を持つ者。

彼は、彼女と同じ”迷い”を持っていない。
それどころか、彼女の心を軽くしているように見えた。

──なるほど。

ぼくは少しだけ、その場に近づく。

すると、男がぼくの方を見た。

「……君も、ここにいたんだな」

ぼくはしっぽを振る。

この男は、気づいている。
ぼくが、“ただの犬” じゃないことを。

彼はぼくを見つめ、静かに微笑む。

「この子、何か不思議な力を持ってる気がしませんか?」

その瞬間、彼女の表情が揺れた。

彼女は、少しずつ理解し始めている。
ぼくがここにいる理由を。

──それでいい。

ぼくは、未来を予言しない。
ただ、“気づくべきこと” に目を向けさせるだけだ。

彼女は、いずれ答えを出すだろう。

だから、ぼくはじっと待つ。

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