「おまじないベーカリー」第7.5章

「おまじないベーカリー」第7.5章

慌てて顔を両手で覆う。

(そんなわけない!)

だけど、一度気づいてしまった気持ちは、もう止まらなかった。

次の日の朝。

ミアはいつも通りにパンを焼きながら、心の中でソワソワしていた。

(昨日のこと、考えすぎかな……)

そう思いながらも、ルイが店に入ってくると、無意識に頬が熱くなる。

「おはよう」

「お、おはようございます!」

なんだか今日は妙にぎこちない。

「……なんか、変だな」

「へ、変じゃないですよ!」

ルイはじっとミアを見つめた後、ふっと小さく笑った。

「ならいいけど」

ミアは内心ドキドキしながら、いつものクロワッサンを袋に詰める。

(落ち着け、私!いつも通りでいいんだから!)

だけど、ルイが袋を受け取る瞬間、指先が少し触れた。

その一瞬で、心臓が大きく跳ねる。

(……やっぱり、これって)

ミアは心の中でそっと願う。

「この気持ちが、優しいままでありますように」

そして、ルイの後ろ姿を見送りながら、小さく微笑んだ。

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